つがいになる前の話
そんなころに携帯電話なるものはなかった
デートで映画を観る約束
映画館のあるビルの入り口で待合せ
当日になる
スタスタ スタスタ ビルの入り口
時計を見る まだ早やい
待つ 待つ 待つ 待つ
時計を見る 映画の時間になる
仕方ない せっかくだから切符を買う
一人さみしく映画を観る
家に帰る 電話をする
「もしもし」
「なんで こんかったの?」
「えっ 行ったよ こんかったのはそっち」
「何言ってるの? 映画見たわよ」
「えっ 僕も観た」
「いったい どこに居たの?」
「えっ 五月通に面した入り口」
「そっちは裏側っしょ! もう ふんとにー!」
ガシャン!
うっ うっ うっ ビェーン⁉