離れ離れで映画を観る:紀元前 16日

 つがいになる前の話

そんなころに携帯電話なるものはなかった

デートで映画を観る約束

映画館のあるビルの入り口で待合せ

当日になる

スタスタ スタスタ ビルの入り口

時計を見る まだ早やい

待つ 待つ 待つ 待つ

時計を見る 映画の時間になる

仕方ない せっかくだから切符を買う

一人さみしく映画を観る

家に帰る 電話をする

「もしもし」

「なんで こんかったの?」

「えっ 行ったよ こんかったのはそっち」

「何言ってるの? 映画見たわよ」

「えっ 僕も観た」

「いったい どこに居たの?」

「えっ 五月通に面した入り口」

「そっちは裏側っしょ! もう ふんとにー!」

ガシャン!

うっ うっ うっ ビェーン⁉